台北の自転車海苔

海外生活は上海に4年、シンガポール2年、そして台湾はだいたい3年近く居て2021年3月に帰国しました。

精読のススメ


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 私が上海に留学したのは28歳の時で会社に3ヶ月の語学留学の制度ができたので手を挙げたのでした。社内で国際化を強く言い始めた時で、とにかく業務に関係なくても良いからどこか海外の国を見て来なさいというユルい留学でした。一応英語の試験と面接があって合格してこの制度の第一回目の留学生として上海に行きました。

 留学はとても楽しかったのですが、私は3ヶ月しか時間がないのでとにかく早く上達したいと思い、大学時代とは比べ物にならないぐらい真面目に勉強しました。

 ただ精読という科目が文学作品を文字通り精読するという高度な授業で苦労しました。苦労というより少し無駄な感じがしたのです。とにかくあの頃は早く喋れるようになりたいという気持ちが強かったので、会話の力を強化する授業がとても受けたかったのです。もちろん聴和説という科目やそのままの「会話」という科目もあったのですが足らず、(文法ももちろん必要ですが)会話の練習こそがあの当時の私に必要なモノだと思っていました。

 クラスには他の生徒も社会人が多くて、(一人東京外大の学生もいましたが)即戦力となることを望んでいたので意見が一致しました。そこで皆で相談して、先生にお願いすることにしました。担任は陸先生という女性の優しい先生できっと我々の願いを聞いてくれると思っていました。

 つまり精読の授業を止めて会話の力を伸ばすための授業にしてください、と陸老師にお願いしたのでした。ところが、予想に反して陸老師の答えはNOでした。

 精読の授業というのは中国語の学習において非常に大切である。会話に換えることなどもっての外である。あなたたちは自分がいまどこにいるのか忘れたのか。日本ではなく中国にいる。甘えてはいけない。街へ出なさい。会話なんてやる気があればどこでも出来る。でも現在もまた今後の人生でも文学作品をじっくり精読するなんてことは他ではできない貴重な経験だ。後で振り返って見て絶対良かったと思うだろう。


 というようなことをおっしゃいました。その時は正直陸老師のこの言葉をあまり理解できませんでした。優しい生徒思いの先生だと思っていたのでこんなに強く否定されて少しショックでもありました。


 日本の英語教育が読み書きに偏っているために、中高で6年、大学を入れたら10年も習うのに日本人は英語が下手だとよく言われますが、私は日本の英語教育は素晴らしいと思っています。私はもちろん英語圏に留学したこともなければ住んだこともありません。従ってほとんど喋れませんが、シンガポールでコンサルの仕事をしていた時は一応英語もなんとかなりました。話すときは主に中国語を使っていましたが、メールは英語でやりとりしてレポートも英語で書いていました。あれだけボロクソに言われている日本の学校の英語教育だけでなんとかなりました。もちろん会話はなかなか覚束ないのですが、現在はメールという便利なモノがあるので英語で仕事もなんとかなりますね。

 何が言いたいのかというと、会話ができるようになるには会話の練習が必要だというのは尤もなのですが、基礎の力を付けるためにはなんといっても精読です。もちろん文法の勉強があってのことですが。

 いまならよくわかります。陸老師があの時言われたことの意味が。

 本当にあの後日本に帰ってからしみじみ思い出すのは魯迅の「故郷」の帰郷するときの窓から見える風景の描写で主人公の心情を表した美しい文章だったり、なんだっけ?血の饅頭の話だったりします(覚えてへんやん(笑))。

 本当にできることならもう一度あの精読の授業を受けたいなあと思います。それに今ならより一層楽しく授業を受けられるだろうなあとしみじみとそう思います。実際いまでも新聞やまとまった中国語の文章を読むときに日本人は漢字がわかるのでだいたいの意味はザっと掴みやすいのですが、正しく理解するには文章を正確に丁寧に読み解く力が必要になります。その訓練をあの時期にじっくりやったことは非常に良かったと思っています。

 

 

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